ゴルフショットの方向合わせ(15)
(前の続き)
精密に水平な作りになっている部屋の床などにゴルフボールを置いて、サンドウェッジ、7番アイアン、ドライバーといった番手別の場所にゴルファー目線で立ってみると、それぞれの床の見え方に違いがあることが(次のような写真撮影によって)確認された。
この事実が意味することとは一体何か?
これまでの話の中で、練習場の人工芝マットなどの広い面積を「同じ水平な1枚の板である」といった認識でゴルフスイングを微調整すると、ゆくゆくパース理論的な問題が発生することを指摘してきた。
「平らな一枚板」のような愚鈍なイメージでも通用する範囲は、一般的に思われているよりずっと狭い、僅か10~15センチ幅の視野の中に限定される、といった具体的な話もしている。つまりその狭い範囲の中でなら、ごく一般的な「直線」や「平面」などのイメージを採用しても、特に問題に発展しないだろうという、実戦的な話をした訳である。
ところが、その狭い10~15センチ以内の範囲だけで「方向性」を考えるとしたら、今度は別の問題が生じてしまうことを、この3枚の写真撮影によって証明されてしまった格好になっている。
意味が分からないだろうからさらに説明を加えていく。
通常ゴルフショットの弾道は「放物線」を描いてコース上に落下する。「放物線」とは、まさにゴルフショットでボールが大空を舞って描き出す「山なりの曲線」のことである。ゴルフ経験がなくても、テレビのゴルフ中継などで一度位その放物線を見たことがある筈だ。
その大空に描き出される曲線美は、ボールの進行方向とバックスピンの回転軸の方向、それと重力の方向が密接に関係して、編み出されるものである。(ショットの原理的な話をしているので、ここでは空気抵抗や風のことについては触れない)
具体的な話をするなら、もしゴルファーが真っ直ぐな弾道を描き出したいと願うなら、インパクト時のクラブフェイスの向きを、それぞれ番手ごとに14種類あると想定されるボール付近の異なった「重力方向(=水平な面)」を精密に見定め、それぞれの重力方向とクラブフェイスの向き(=バックスピンの回転軸の方向)を、これまた精密に合わせなければならない仕事を課せられている事になるだろう。
と、ここまで書いた処で、ゴルフスイングにおけるゴルファーの背骨の角度やスタンスの向きに、ほとんど意味が無かったことが少しずつ把握され始めているのではないだろうか?(実際、それらはほとんど無意味な項目なのである)
ゴルフの方向性で重要なのは、ボール付近の異なる重力方向を見定めることと、その方向に対してボールに与えるバックスピンの回転軸方向を、どのような向きにセットするのかを、予め精密に見定め、調整する努力行為に他ならない。
これも具体的に説明すると、3枚の写真にあるコーヒーカップの角度に準じるように、実際ゴルフクラブのヘッドの位置を微調整しなければならない訳だ。
ゴルフ経験者なら、それぞれのコーヒーカップの角度と重なるように、クラブヘッドを配置するという、説明文の意味が、それなりに把握できると思う。
(続く)