「制御系」~ゴルフスイングを彩る「未来予測」の技術~(4)
とりわけゴルフ技術の中でも「制御系」は最も謎めいている。
例えば、ゴルフスイングの基礎的なものだと習うボールを置く位置についてだが、一般的にボールはゴルファーの左足辺りに置くべきだと言われている。ゴルフクラブもそれに合わせて設計されているものばかりだから、ボールを置く位置を革命的に右足の前にしようなどとチャレンジする向きは、あまり賢い判断だとは言えない訳だ。
それでもボールを左足の前、つまりゴルファーの中心から左サイドに置くという部分に、トラップ(罠)というか、注意すべき事柄が幾つも転がっている。
その手のトラップに引っ掛かると、特に初心者は即ミスに繋がるから、ゴルフは初心者に容赦ない厳しいスポーツだと言えるだろう。
その厳しさの一面が見える動画を見つけたので是非拝見して頂きたい。
この動画では人気ユーチューバーの女性が初ゴルフのラウンドで(それなりに練習したのにも関わらず)散々な結果を出してしまう自分に不甲斐なく、途中で泣き出すシーンが納められている(2分10秒辺り)。
さすがに泣き出す人はあまり居ないかもしれないが、ゴルフ競技で求められるものは「確かな技術」だけであり、間違ったスイングをどれだけ繰り返しても(それで泣いても笑っても)結果は同じ。間違ったスイングからのミスは連発して止まることを知らない。正に情け容赦ない結果となるのがゴルフなのである。
勿論その厳しさはプロゴルフも同じで、近年故障からの復帰でようやく活躍し始めたタイガーウッズなども、(動画の彼女より何万倍も苦労を積み重ねての失敗続きで)大泣きしたい気持ちだったに違いないのだ。
さて、動画の彼女が泣かされたように、初心者ゴルファーが通過儀礼のように厳しい仕打ちに遭うミスの代表格と言えば「ダフり」である。「ダフり」とは、ゴルファーがスイングでボールを打つ前に、ボールの右側(手前)の地面を叩いてしまうミスショットのことだ。
初心者に限らず、ゴルファーの誰もが地面を叩こうとは思っていない。
動画の彼女だって、地面を叩かないように制御してスイングしているつもりだが、実際は手前の地面ばかりを連発して叩いてしまう、「ダフり」のミスの連発が止まらない事態に陥るのである。
著者にとって「ダフり」のミスの原理・原則は明白だ。
それはゴルファーがボールを左足付近に置くからだ。ボールを(ゴルフクラブの設計思想通り)左足の前辺りに置くと、相対的にその付近の地面は「左足下がりの傾斜」のような変化を引き起こすのだ。
この理屈を説明すると、例えば今貴方が見ている(パソコン等の)液晶画面に注目して頂きたい。液晶画面の中央と、その左端の目線とでは、画面の角度に違いが生まれる。
下の図でその意味がよく分かる筈だ。
(上の図で分かるように)液晶画面の中央は直角の「平面」として認識されるが、液晶画面の左端はやや斜めの浅い角度の面として認識されてしまうのである。
この液晶画面の左側にボールを置いたと仮定すると、貴方のスイングイメージは画面左側に置いた分だけ角度を浅く調整しなければならない。もし(次の図の赤色の直線みたいに)左側の画面を「直角の面」と誤解したままスイングをイメージすると、図のオレンジ色のスイング弧が示すように、液晶画面をえぐるような「ダフり」の軌道を描くことが分かる筈だ。
これが「ダフり」のミスが生まれてしまう真の理由である。
実際にボールが置かれている液晶画面の「面」は(画面中央のような)直角ではなくて「浅い傾斜角」が付いているものと認識しなければならない。
だから古来からゴルフスイングは「上から鋭角に打ち込め」などと言われるようになった歴史が生じた訳だが、問題はその理由を真に理解できるかどうかである。大抵のゴルファーは「ほとんど直角だ」などと地面の傾斜をかなり大雑把に扱う為、スイングの弧がボールの右側の地面をえぐってしまうミスの連発に繋がる事態から脱出できなくなってしまうのだ。
【結論】
ボールを左側に置く場合、左足側が下がったような「左足下がりの傾斜」の場所でスイングするイメージを持たなければ、「ダフりのミスが連発する」という由々しき事態から脱出することは困難である。
(続く)