「制御系」~ゴルフスイングを彩る「未来予測」の技術~(3)
少し前に「ゴルフ原論」と題したテーマで、ゴルフ史における由緒正しい「インテンショナル・ショットを打つ技術」を紹介した。
「ゴルフ原論」でも説明した通り、打球を自在に曲げる技術そのものはかなり古くから解析されていて、現代の平均的なゴルファーなら誰でも知っている程度の平凡な知識だと言える。だから「こうすれば憧れのドローボールが打てますよ!」などと知ったかぶりして説明すれば、かなり間抜けなことになっているだろう。
そこで著者はこの「由緒正しき古典的ゴルフ技術」を紹介する上で、著者なりのオリジナリティを加えたフォーマットを作成してみせた。
例えばアマチュアがNO.1に憧れる打球を右から左へと曲げる「ドローボール」を打ちたいのなら、インパクト付近のスイング軌道を「インサイド・アウト」にしなければならないのだが、著者はその古典的な解析に(下図の青色で示したような)平行四辺形でボールを打つ必要性を案じてみせたのである。
では、そのように(著者のアレンジ込みで)「平行四辺形に打つ」という解析さえ知れば、誰でも容易に憧れのドローボールが打てるのかというと、それは無理なのである。
(ゴルフ経験者なら誰でも知っている現実なので、説明は省く)
確かにインテンショナル・ショットのひとつである「ドローボール」を打つには、インパクト付近のスイング軌道をインサイド・アウトに調整しなければならない。
だがアマチュアゴルファーが実際にそうしようと模索して、スイング軌道をあれこれコントロールしても、現実の打球は(思惑とは正反対の)左から右へと曲がるスライスショットになったり、ボールの手前の地面を叩いてショットを台無しにしたり、最悪の場合は空振りするのである。
だが、ゴルフ競技の本質は正に「ここにある」のだとも言える。
つまり、あらゆるゴルファーはどのようにすればボールを自在にコントロールできるのかを熟知しているし、そのように意図してスイングしている筈なのだが、全くと言って良いほど打球をコントロールできない「厳しい現実」が目の前に現れる、という事である。
確かにスイング軌道を(著者の紹介したフォーマットの示す通り)平行四辺形にコントロール制御できるなら、ボールは憧れの(右から左へと曲がる)ドローボールとなって、大空に気持ちよい弧を描いて飛んで行くだろう。
だが、現実はその通りにいかない。
その意味では、インサイドアウトだろうが、平行四辺形だろうが、知ったこっちゃない。
そういった物理解析にどれだけアレンジを加え、あらゆる改善策を打ち立ててみても、真の解決には結びつかない。
Aゴルファー「こうしたいけど、ダメなの。」
Bコーチ「じゃあ、こうすればいい」
Aゴルファー「そうしたけど、やっぱりダメでした」
Bコーチ「その場合はこうだから、こうすればいいよ」
Aゴルファー「そうしたけど、やっぱダメだった・・・」
Bコーチ「そういうのはこうなっているから、こうしたら良いよ」
Aゴルファー「そうしたけどダメだった・・・」
改善策を何度打ち立てても、改善策そのものが思い通りできない意味では同じなのだ。
当然その改善策にさらなる改善策を打ち立てても、やっぱり同じ理屈でさらなる改善策ができないを繰り返すだけなのである。
あくまで問題の本質は「分かっちゃいるけど、それができない」という部分に集約されているので、その本命とも言える「最重要な課題」に向き合い、そこを解決しなければ、事態は一向に前に進まないのである。
(続く)