「ゴルフをしない私」から「ゴルフをする未来の私」へ

10年前まで月1ゴルファーだった私も、今では月1~2回練習場に行くだけの「ゴルフをしない人」です。経済的な事情で一旦ゴルフから身を引きつつ、それでも遠い未来で再開するのを夢見ているオヤジは、今の日本に大勢いると思われます。そんなオヤジの、遠い未来に再開される自身のゴルファー像を夢見るブログを作ろうと思います。

いきなり始まるゴルフスイング(13)

(前の続き)
前回「メンタル」の話にいきなり飛んだ理由は、ゴルフにおける「物理」の話をする上で、メンタルについて、ポイントだけでも押さえておきたかったからである。


ゴルフは残酷なまでに「生々しい現実」を見せ付ける競技である。結果を出す為に「やるべきことが出来たかどうか?」という素朴な部分だけが問われる、他の要素が極限まで入り込みにくい特性があるスポーツだからだ。著者はゴルフ技術において、物理の法則を重要視するのだが、だとしたら、それだけ物理を重要視する著者が何故メンタルについての説明を加える必要があると考えたのか、という疑問を残すことになる。


今回はその問いの解説を中心に話を進めていく。(イマイチ意味がよく分からないかもしれないが、このまま読み進めて頂きたい)


スポーツ競技の多くは「戦争」で必要な武芸の運動能力を開発する為に競技化してきたという歴史がある。確かにオリンピック競技にも戦争をイメージさせる人気種目が数多くある気がするが、そういった勇ましい歴史のある人気種目と違って、ゴルフの由来はなんとも牧歌的な「羊飼い少年の暇つぶし」というほのぼのした伝説だ。


戦争をイメージさせる他の種目とは明らかに毛並みの違う牧歌的なゴルフの印象は、ゴルフ競技に他ならない「難解な現象」を生み出す土壌があるものと、著者は分析している。


牧歌的でもスポーツである以上、大学受験の裏口入学や推薦のような手口が存在しないのは当然だが、ゴルフ競技に関しては国籍、人種、性別などは無論のこと、よくその手の話で使われる「才能」「実力」「根性」「経験」「実績」「練習量」「プロ」といった要素でさえ、冷酷なほど無関係に結果が出てしまう恐ろしい一面がある競技だとも言える。


だからTVのお笑い番組などで、運動神経抜群でアスリートっぽい屈強な男性らが、ゴルフ経験豊富な小学生チャンピオンの女の子とゴルフ勝負をして、ガチに負けてしまうシーンなどを見ることもあるが、ゴルフにおいてこのようなシーンは特に珍しいものだとは言えない。


下の動画を見て欲しい。



【衝撃】 イップス? 復帰したタイガーウッズがアプローチでダフる 2日間で5回


この動画は絶不調なアプローチショットのミスを連発するタイガーウッズの珍しい姿を記録したものである。


こんなタイガーならトップレベルのアマチュアゴルファーにだってガチで勝てるかもしれない。もしそんなことが有りえるなら、タイガーにとってそれは残酷極まりない現実ではある。だが、その残酷な事実こそが「ゴルフの生々しい姿」をよく現していると著者は考えている。


もちろんフィギュア・スケートのように、誰の目にも難解そうに見えるスポーツにも同じ事が言えるのだが、それら多くの難解なスポーツは、見た目にもその難解さが十分に伝わってくるだけ、救われている部分があるのだ。


ゴルフでは「羊飼いの少年の暇つぶし」のような牧歌的な印象がある為、経験のない人からは「超簡単そう」に映ってしまうスポーツ競技である。実際にも老人が若者にガチで勝てる程に難解な競技性である反面、第一印象の牧歌的なイメージとのギャップが他のスポーツより強く出る傾向があるのだと解析できる。


そのギャップの大きさから、他の難解なスポーツよりも「残酷さ」が際立って強く感じられてしまう、という訳である。


このゴルフにおける「超簡単そう」な第一印象は、経験豊富なゴルファーの中にも根強く残っている。そして、それこそがゴルフをより難解なスポーツにしている要素のひとつになっていると著者は分析しているのだ。


例えば、フィギュア・スケートのように分かりやすく超難解なスポーツであっても、1万時間以上も厳しい練習を乗り越えた競技者にとっては「なんて簡単なんだろう」と実感できる瞬間が訪れる可能性があるかもしれない。


だが、仮にそういった達人的な競技者から「スケートなんて簡単だよ!」といったアドバイスを受けたとしても、経験の浅い初心者のスケーターには全く響かない筈である。


これがゴルフ競技となると話が違ってくる。


とある達人級のプロゴルファーから「本当はゴルフなんて簡単なんだよ」といったアドバイスを受けてしまうと、どのレベルのゴルファーであっても「あのプロが言うのだから、きっとゴルフは簡単なのが本当なんだ!」と、つい無邪気に信じてしまう可能性が極めて高いのである。


何故フィギュア・スケートの達人が言っても、全くの素人が「それは違う!プロの方が間違っている」と迷い無く否定できてしまうのに、ゴルフとなると「そうか、簡単なのが真実なんだ!」とプロの言葉の方を鵜呑みにしてしまうか?


ゴルフの難しさを知る為に、次の動画も見て欲しいと思う。



【香妻琴乃】日本一アゴの高いバンカーで大叩き☆ブチギレ顔は必見☆


なんでこんな残酷なシーンの動画ばかり見せるのかというと、ゴルフ技術の本質を知ってもらう為には、ナイスショットを連発する「成功例の動画」を見る事で「ゴルフって簡単だね!」と誤解してしまうより、信じがたいミスショットを連発する「恐ろしい動画」の方がずっと参考になるからである。


この動画の香妻プロは、このバンカーショットを打つまでの順位が5位であるから、それまでずっと安定した良いショットを打っていた筈なのである。それが突如として彼女の身に何かが起こったのか?それまで安定していたゴルフがボロボロに崩れてミスショットを連発し、それまで築き上げてきた順位を台無しにしてしまった訳である。


冷静に分析すると、彼女はトップレベルのプロゴルファーだから、素人ゴルファーのレベルではありがちな「打ち損じ」のミスを連発することは考えにくい。だがゴルフ競技は、このレベルにまで達した競技者ですら、突如として奈落の底に叩き落すに十分な打ち損じを連発させるような「冷酷さ」を我々に見せ付けるのである。


もちろん他のスポーツ競技にもそんな恐ろしい一面は幾らでもある筈だが、「羊飼い少年の暇つぶし」といったゴルフの印象からはちょっと想像しにくい一面であると言えよう。むしろ他のスポーツに比べて、ゴルフの牧歌的な印象がより冷酷なシーンとして演出する役割を買っているかのようでもある。


例えば、棒高飛びのような超人的に映る競技なら、やったことが無い人にでもその難しさが十分に伝わるものだ。プロのテニスプレーヤーの時速200キロを超える弾丸サーブや、それを果敢に打ち返す姿からも、彼らの凄まじい技術の難解さが伝わってくるのである。


だが、芝生の上に転がっている小さなボールをわずか数メートルほど転がすだけであるゴルフ競技からは、そのような恐ろしさは微塵も伝わってこない。


わずか数メートルのパットなら、経験の無い小学生にだって直ぐにでも打てそうなものだが、実際に必要なパット技術が見た目ほど簡単な筈はない。


その証拠に「イップス」と呼ばれるその手の短いショットが上手く打てなくなる奇病がプロゴルファーの間で恐れられている。そういった奇病に対しての施術は、プロの間でも間違った解釈の下で処方されがちである。


イップスで最も有名なショートパットが入らなくなる症状では、「ショートパットは本来最も簡単なショットである筈だが、ゴルファーの中には考えすぎて入らなくなるケースがあるのだろう。イップスはメンタルの病だ。その神経質になり過ぎた心をほぐせば、きっとまた入るようになる」といった具合に、精神論を前面に打ち出して「真の原因」を追究しようとしない風潮が蔓延している。


何故ショートパットの技術が簡単だと言えるのだろう?(皆がそのように思っている訳ではないが、イップスの原因が精神的なものであると決め付けているプロが驚くほど多い。)


イップスの原因を物理的な解析によって追求しようとしない風潮から察するに、やはりプロゴルファーといえども、ゴルフ競技の本質的な技術に関わる部分は「簡単なもの」であると、心のどこかで思っているのではないだろうか?


イップスのような奇病に対して万策尽きた場合、その原因を「メンタル」であると断定すれば、メンタルの専門家である精神科医にも通用する程、万能的に原因としての役割を全うして演じてくれるから、そこに危険な落とし穴があると著者は考える訳だ。


前回の話にもあったように、「イップスの原因はメンタルである」と信じる人にとって、イップスは実現化してしまう性質のものである。


そこから論理的に考えれば、イップスは次の2つに大別される。


①最初は技術的な欠陥からパットが入らなくなる→技術的な解決ができずにパットを外し続けていたら、メンタル的に病んできた→次第にその精神面こそがイップスの原因である信じ込みだした→技術的な面を解決しても、メンタル的なイップスの症状は残ってしまった(=イップスの実現化)。


②以前からイップスの存在を信じて恐れていた→短いパットを外す度にイップスになったのではと恐れた→とうとう精神的に病んでメンタル的なイップスの症状が実現化した。


上記①②のパターンはどちらも最終的にメンタル的な原因でイップスが発症している訳だが、特に①のケースでは、最初に技術的な問題を解決できれば良かったかもしれないのに、メンタル的なイップスまで合併症みたいに発症して、もはや技術的な解決策だけでは治らなくなった残念なケースだと言える。


メンタル的なイップスが発症してしまった場合、著者が試すべきだと思う施術は「催眠術的な処方ができる精神科医に相談する」ことである。


催眠技術によってイップスの症状を治す方法は実践する価値が十分にあると著者は考えている。メンタルが原因であるイップスの場合、ゴルフの技術的な側面の解明や練習だけで解決させるのが難しいと考えられるからだ。


さらに注意すべきは、どちらにしても「イップスはメンタルが原因であると信じて疑わない現象」になっている点である。


(意味が分からないと思うから説明を続けていく)


一般的にメンタル的なイップスの症状は「最上級者に限定される」という説が有効だが、その理由も次のように論理的な解析が可能なのである。


まずゴルフの初心者がミスを連発する場合、そのミスの原因は、初心者の練習不足や経験の少なさ、それと技術的な部分の未熟さが原因であると信じて誰も疑わない。初心者自身の目にもそれは明らかで、たとえメンタルが原因であると瞬間的に思ったとしても、それを確信するに至らない状態である、と分析できる。


ゴルフの上級者にも同じ原理は働いていて、ミスの原因はあくまで己の技術不足であり、プロレベルの練習量をこなしていないなどの理由が最右翼にあると信じる余地があるから、メンタルが原因のイップスが発症するような現象には至らない状況に留まるのである。


ところがこれがツアープロの賞金王レベルになると、話が違ってくる。


賞金王レベルのプロゴルファーともなると、自分のゴルフ技術に絶対的な自信を抱いているものである。その自信の強さこそが彼らを賞金王たらしめる理由の最右翼となっているのかもしれない程だ。技術レベルをミリ単位で競う彼らにとっては、自信の強さや大きさは勝つ為の必要条件なのである。


だが、その最強レベルの自信こそが、彼らの信じがたいイップスの原因を「メンタル」であると確定させてしまう皮肉な結果に導くのである。その自信が強固であるが故、イップスという奇病の実在を信じて疑う余地を一切残さない訳である。


自分の技術に強固な自信があるから、彼らは信じられないミスの出現の原因を「メンタル的に不可思議なイップス現象は実在する」というフィクションを確信させることによって、彼らの心にベットリと張り付く訳である。


これで「初心者には発症せず、最上級のゴルファーだけに発症する」という奇妙な現象の現実こそが、イップスの実在性を否定する根拠として成り立つ訳である。


初心者はイップスの存在を信じられないから、イップスは発症しない。


最上級者は技術的な自信が強固で揺ぎ無いが故に、メンタル的なイップスの症状が実在するという嘘を信じ込むことで、ミスの原因を理解してしまうのである。


イップスは存在しない心の病である(初心者は発症しないのが証拠である)。だからイップス問題の本質は、それが実在すると信じ込んでしまった人の心理状態をどう破壊するか?という見方が有効になるのだとも解析されよう。


とりあえず著者はゴルフ競技における「物理」の話を徹底する事で、プロゴルファーでさえ陥りがちな「メンタルこそがミスの原因」といった間違えやすい解釈の方向性を、先回りして完全否定しようと考えた訳である。


そこで前回「メンタル」についての話を取り入れた訳であるが、実際のゴルフ競技というものは、この「メンタル」の間違いと「物理の正解」との狭間を行き来する性格のものである、と著者は考えている。


例えば、ゴルフを知らない初心者の多くは自信満々でドライバーを振り回すものである。


実際にドライバーを振り回す初心者心理というものは、思い通りにボールが勢いよく飛び出すものだと信じて疑わない(これはイップスとは逆の現象である)。ところが、現実の結果は散々たるもので、全ての初心者は(物理の法則によって)冷酷なまでに叩き出される散々たる結果に打ちのめされる。


そして多くのゴルファーはそれが何かの間違いだと、何度も仕切り直しては打ち直し、何十球、何百球と同じミスショットを続けて、確かめようとする。


これら散々たる結果の多くは初心者だけのもので、熟練ゴルファーやプロゴルファーはきっとこんな粗末な悩みを乗り越え、毎日ゴルフをエンジョイできているに違いないと、初心者ほどに思ってしまう。恐らくそれは第一印象が「超簡単そう」に思ってしまったスタート地点での誤認イメージが悪い影響を及ぼしていると著者は分析している。


実際のゴルフは決して簡単ではない。だからプロもアマも共通して同じ根源的な悩みを抱えている訳である。


世界最強だったタイガーウッズですら、未だそのゴルフ技術を理解し切れていない。だからこそ、彼も未だに技術探求を続けてスイングを改造しているし、誰もが目を疑うようなミスショットを連発する姿を我々に見せ付けるのである。


達人中の達人であるタイガーですら、あんなミスを連発するのだから、その原因は技術ではなくてメンタルしかないだろうと、間違った解釈をしてしまうのも無理はない。


だが、メンタルが原因であると仮定しても、世界トップクラスの大会で最高峰のプレッシャーを跳ね除けて戦ってきた筈のタイガーウッズがいきなり素人以下のランクにまでメンタルが弱くなるという解釈は、やはりどこか変では無いだろうか?


常識的に考えるなら、タイガーウッズのメンタルレベルは世界最高レベルにまで達している筈で、あらゆる意味で完璧な準備をしてゴルフ競技に望んでいると考えるべきだろう。


故にあの散々たるミスの結果をもたらした理由は「ひとつ」しかない考えられない。


それはごく単純な答えで、タイガーウッズといえども、物理的にゴルフクラブをコントロールする「真の技術」については、数多く練習を繰り返す「慣れ」といった方法論に頼る方向でしか解決して来なかった、というものである。


つまり、タイガーウッズといえども「原理はよく分からないけど、幼児期から繰り返し練習して精密に打てるレベルにまでコントロールできるように、いつの間にか慣れた」というだけであり、原理的に確かなものを解明できていた訳ではないのだ。


平たく言えば、世界最強にまで登り詰めたタイガーウッズですら、あの動画のミスショットの原因が「よく分かっていない」のである。


だからせいぜい「メンタル的に・・」といった言い訳めいたものしか口から出ないのかもしれない。


確かにこの動画に映るタイガーのメンタルは最低のものだろう。だがそれは昨今の彼の散々たるゴルフの結果によって「落ち込んだ心理状態」になったと考えるのが道理であり、「メンタルが最低だからミスをした」という順逆の因果関係は成り立たないのだと考える方が、賢明な判断なのではないだろうか?


最後に次の動画も参考にみて頂きたい。これは2013年に賞金女王になった森田理香子プロがアプローチ・イップスになってシード権を失ってから復活を目指す感動的な記録映像である。


※ちなみに著者はこの動画を見る限り、森田プロの精神が強すぎる事が、逆にイップスの症状を直りにくくさせている原因、あるいは土台となっていると分析している。



2013年賞金女王 森田理香子が3年でシード権を失った理由とは?


(続く)

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