「ゴルフをしない私」から「ゴルフをする未来の私」へ

10年前まで月1ゴルファーだった私も、今では月1~2回練習場に行くだけの「ゴルフをしない人」です。経済的な事情で一旦ゴルフから身を引きつつ、それでも遠い未来で再開するのを夢見ているオヤジは、今の日本に大勢いると思われます。そんなオヤジの、遠い未来に再開される自身のゴルファー像を夢見るブログを作ろうと思います。

このゴルフブログの趣旨について(5)

このゴルフブログは思想家・東浩紀の文体を真似ることで、その言葉に秘められている哲学的な思考の力を間借りし、一般的なゴルフレッスンでは見る事が叶わないゴルフ技術の違った側面を掘り起こしながら書き進めようとしている「純粋なゴルフ技術」の記録である。


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(前の続き)
これはベン・ホーガンの練習風景が撮影された貴重な記録映像である。

Ben Hogan Swing 1953



ちなみに現代のプロゴルファーの練習風景は下の動画である。

【有村智恵】アイアン 練習風景&スイング解説



60年以上前のベン・ホーガンのスイングが、現代の最先端技術を駆使する女子プロのスイングと比較しても、まったく見劣りしないどころか、驚くことにホーガンの方が高い領域でスイングしているのである。これはゴルフをしない方にでもハッキリ区別されて見えているのではないだろうか?


ホーガンの時代はプロの試合が行われるゴルフコースであっても、打撃練習場が殆ど設けられていなかった。現代なら何処のゴルフコースにでも設けられている打撃練習場が無かった理由は、プロゴルファーでさえ練習しないのが当たり前だったからである。


ホーガンはゴルファーの中で最初に練習を始めた、練習のパイオニアだった訳である。


これは驚くに値しない。例えばボーリングをする時に私たちは練習せずに、いきなりボールを投げ始めるし、ゲームが終わった後も練習する人なんて居ないが、誰もそれを変だと思わない。それと同じである。60年前のゴルフ競技というものは、現代のボーリングと同じように「練習しないのが当たり前」だったのである。


最初に練習を始めたホーガンは、(練習場が無かったので)コースの中でそれに適した場所を見つけて、そこで自分から沢山のボールを準備して練習していたのだ。打ったボールを回収する機械も無かった当時の練習では、打球の落ちる場所に予め回収役の人を立たせていたそうであるが、ホーガンの正確無比なショット・コントロールによって、危険どころか、(ドライバーも含めた全ての)打球が予定されていた地点に集合するように落とされたというから、これは現役のプロが聞いても驚く技術レベルであろう。


練習なんて誰もしなかった60年前のゴルフ界で、最初に練習し始めたホーガンが、他の選手よりも格段に違う圧倒的なレベル差のゴルフをしていたのは、当然といえば当然だったのかもしれない。


ベン・ホーガンの「シークレット」の真相の一面は、「なんだ、練習していたのはホーガンだけだったの!ある意味卑怯ジャン?!それって?!」と思う人もいるかもしれない。


いや、、ちょっと巻き戻って考え直してみて欲しい!


当時のベン・ホーガンがいかに練習していたとはいえ、現代のプロの方が遥かに多くの練習をしているし、それどころか、現代のプロゴルファーの多くは練習以外に筋力トレーニングも取り入れている。


さらに、練習で使う最新鋭の機器が揃っている。ベン・ホーガンの現役時代は自分のスイングする姿を映すビデオカメラが無かったから、客観的に観察しながら練習や研究ができる環境とは程遠かった。スイングスピードや入射角やスピン量を計測する機器も無ければ、パソコンなどのデジタル機器も当然存在すらしていない。


さらにベン・ホーガンには専属のコーチも居ない。


現代では専属のコーチを雇い入れ、自分のスイングの状態を観察させて適切なコーチングを受けながら調整を行うのが普通であるが、ホーガンは自分のスイングを教える「師匠」さえ居ない環境で自らのゴルフ技術を構築した訳である。


つまり、現代のプロゴルファーの満ち足りた環境とは程遠い所で、ベン・ホーガンは卓越したゴルフ技術を構築した訳である。


(一体どうやって?)


ベン・ホーガンは社交的な人間ではなかったから、他のプロゴルファーとの交流も殆ど無く、故に他のゴルファーとの技術的な情報の交換からも閉ざされていた「ガラパゴス」なる環境下で、卓越したゴルフ技術を磨き上げた。


練習量だって現代のプロより少なく、フィジカルトレーニングも取り入れていない。自分のスイングを写すビデオカメラもなく、だからといって客観的に指導してくれるコーチも居ないのに、何故ホーガンは現代のプロをもしのぐ卓越したゴルフ技術を構築しえたのだろうか?


これは未だ解き明かされていない、ベン・ホーガンの「シークレットの謎」の健在性を示す証拠である。(勿論、筆者もその謎は解き明かせていない)



ベン・ホーガンはその謎をシークレットしたまま1997年に亡くなる。享年84歳。


(続く)

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