「ゴルフの基礎理論」~身体制御の基礎知識~(10)
前回の話により、私たちが認識している世界は、光でさえパースによる影響によって湾曲する軌跡を描くことが明らかになった。
私たちの視野に映る像は、全て対象から反射した光が「純・直線的に」私たちの瞳まで届く事で成り立っていることも、論理的に解明できた(ものとしよう)。
これを逆に言い換えると、私たちの瞳に届く光以外のものは全て(たとえレーザー光線といえども)パースの影響によって湾曲している訳である。
ちなみにこの「瞳に直接届く光の軌跡」を論理的に突き詰めると、パース理論の本質に行き着くのだが、これについては著者がクドクド説明するより、関係しているリンク先を紹介するに留め、興味のある方が自主的にチェックされるに任せる方が良いと思う。(かなりマニアックに難しい話になるからだ)
ちなみに参照すべきリンク先は次のようなものだ。
①パースの取り方、描き方や基礎知識をまとめました | 絵師ノート
②遠近法 - Wikipedia
この中で特筆すべきものはウィペディアの「遠近法」で示されている概念図である。
「透視図法」とは上の図が示す通り、対象と瞳を結ぶ純・直線的な軌跡が、平面のキャンパスを透過する際に、そのキャンパス上に導き出される像の「空間の歪み」という訳である。(かなりややこしい話だ)
私たちは目の前のものを見る際、(上の概念図のように)平面のキャンパスを透過させていないと思ってしまうが、それについては、次のピンホールカメラのリンク先をチェックして頂ければ理解できるだろう。
ピンホールカメラは、カメラや私たちの瞳などの「レンズによって写像を得る仕組み」を分かりやすく説明してくれているので、是非参考にして頂きたい。
私たちはガラス窓などを透過して見える外の景色のように、目の前の対象物を見ている訳ではない。私たちの瞳はピンホールカメラのように、瞳のレンズを通過した光が目の中の網膜に上下を逆転させた像を映す仕組みによって、目の前の対象物を視覚している。
だが、この「ピンホールカメラで捉えた上下を逆転させた像」を180度回転させると、透視図法の概念図で示された「平面のキャンパスを透過させて得た像」と完全に一致したものになるという訳だ。
よって平面のキャンパスを透過するパースの概念図と、カメラや瞳の仕組みは、根本的に同じものであると言える。
パース理論によって導き出される「空間の歪み」は、私たちがゴルフをする上で絶大な影響を及ぼすものであるから、決して無視してはならない。
だが、ものは考えようである。目の前の15cm足らずの三角定規を使って机の上で何か作画する程度なら、パースベクティブはほとんど悪さをしないのである。
机の上で行う作画程度の範疇でなら、全てを「純・直線的」な振る舞いとして扱っても、パース理論的な問題が浮上するまでには至らない。これを理解するには、以前の話で、A4サイズの紙面に1辺5センチ程の正方形を5個並べた図を描いた写真を紹介した部分を思い出して欲しい。
この写真に「純・直線的に赤色の直線」を描いてみると、正方形1個分の5センチ程度の範疇までは、パースベクティブを完全に無視した「純・直線的な軌跡」とほぼ一致することが確認できたと思うのだ。
つまり視野のごく狭い範囲においては、パースベクティブはほとんど無視しても構わないという事である。
これをゴルフ競技に照らし合わせると、地面の置かれたボールの周囲30センチ程度の範疇までなら、パースベクティブは殆ど無視しても構わないという訳だ。
それがもしボールから50センチ~1メートルも離れた座標を同時に認識するような格好で、純・直線的なイメージを持ってゴルフスイングを構築しようとするなら、パースベクティブを無視することが決定的なミスに繋がるような結果にも成りうる、という訳である。
机の上で15cm程度の三角定規を扱う程度の範疇を、ゴルファーが地面の上に置かれたボールまでの距離に換算し直すと、長さは倍の30センチ程度の範囲になるという訳だ。
つまり、パース理論によって現実的にゴルファーが成しえなければならない原理・原則とは、小難しいパースベクティブによる空間の歪みを計算して、パースによる空間の歪みを厳密に知ることではないのだ。
(我々はそこまで暇ではないし、スロープレーに繋がる行為も避けたいと思うだろう)
あらゆるゴルファーは「わずか30センチの範囲内でだけ、直線的な方向性をイメージする」という、素朴かつ実現的に可能な法則を選択することが肝要なのである。
(続く)